日本小児看護学会第32回学術集会 日本小児看護学会第32回学術集会

会長挨拶

地方独立行政法人福岡市立病院機構 福岡市立こども病院
看護部長(認定看護管理者/小児看護専門看護師)
三輪富士代

日本小児看護学会第32回学術集会を2022年7月9日(土),10日(日)の2日間にわたり,福岡国際会議場で開催させていただくことになりました。このような栄えある本学会の学術集会を,会員の皆さま,関係の皆さまのご支援・ご協力のもと,福岡の地で開催する機会を頂きましたことに,心より感謝申し上げます。

今回の学術集会のテーマは,「今,目の前のこの子にできること~こどもの尊厳,生活,未来を守る小児看護実践~」といたしました。このメインテーマに関わるコンセプトとして,「こども中心であること(今,目の前にいるこどもへのケア)」「看護実践で,こどもの尊厳,生活,未来を守る」「小児看護の実践力」という3つをあげました。

近年,少子高齢化は止まることをせず,こどもと家族を取り巻く社会情勢は,大きく変化しています。新型コロナウィルス感染拡大や様々な災害,社会経済の低迷,地域の人間関係の希薄化,家族の養育機能の低下は,貧困や虐待などを含めて,こどものいのちや生活に大きく影響しています。高度医療の現場は,出生前診断,重症な状況での救命や積極的治療の判断など,こどもの生命から生活の質に関わる複雑な課題も抱えています。こどもが産まれて生きることを支える,不安や苦痛を緩和する,大人になるのを支え見守るなど,小児看護には様々な局面があります。その一つひとつの場面で,こどもと家族にとっての“最善”を尽くすことが,私たちに課せられた責務ですが,それは決して,たやすいことではありません。小児看護の対象には,成長・発達の途中の過程や疾患・障害によって,判断や理解,言語での意思表示が困難な状況のこどもも含まれます。訴えや意思がわからず,“何がこの子にとって良いのか”を,親や家族,医療者といった周囲の大人が判断していくしかない場合もあります。難しいことですが,“今,目の前にいるこの子”に対して,“こどもを中心として”“その‘声なき声’に耳を傾け,“こどもを主語として考えていく”こと,それが,こどもの尊厳を守ることにつながると考えます。本学術集会では,改めて,「こども中心であること(今,目の前にいるこどもへのケア)」について考えてみたいと思います。

こどもの尊厳,生活,ひいては未来を守っていくためには,小児看護の実践力を高めていくことが重要だと考えます。小児看護を提供する場は,医療,福祉,在宅,学校など多岐にわたり、医療現場も,小児へのケアを集約化して提供できる場もあれば,成人領域の中で,小児に関わらなければならない場もあります。安全確認や感染予防のための対策,複雑化した電子カルテ操作と,こどものケアに至るまでに,いくつもの行程を踏まなくてはならない状況にもあります。煩雑で多忙な現場にありながらも,その中で,私たちが行っているこどもへの看護実践一つひとつの意味や重要性を改めて見出し,実践力を磨いていく方策について,本学術集会で考えていきたいとも思っています。

2022年の7月の生活様式がどのようになっているのか確実な予測はできませんが,現在は,福岡の地で参集し,顔を合わせ,たくさんの討論ができるように,学術集会の準備を進めています。小児看護について,立ち留まって考える場,様々な課題の解決や実践力の向上の場となり,それぞれの現場に何か一つでも持って帰るヒントが得られるように,教育講演,特別講演,シンポジウム,テーマセッションなど,鋭意,多数企画の準備をしております。

来年の7月には,福岡の美味しい食事やお酒も楽しんでいただくことができれば,とも思っております。企画委員一同,有意義な学術集会となるよう努力をしておりますので,奮ってご参加いただけますよう,何卒,よろしくお願い申し上げます。

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